だから何ですか?Ⅱ【Memory】







「・・・・お騒がせしました」


「っ・・・」



不意に背後から響いた声音と、自分を引き戻す様に背後から絡んできた腕と。


引き戻された体がトンと彼の体にぶつかったらしい。


煙草の匂いがふわりとする。


自分の頭の横に彼の頭を近くに感じた刹那、



「・・・もう、・・いいんだよ」



私にだけ聞こえる様に耳の近くで落とされた彼の結論の言葉。


驚き振り返り至近距離で捉えた彼の表情は諦めを映す苦笑いだ。


もう、いいから。と私に示し、すぐに背を向け入り口に体を捻る姿に言い様のないもどかしさが息苦しい胸に溢れて溢れて・・・。


ああ・・・限界。





吐いていいって・・・・言ったよね?





「___っがう・・・・違うっ、」


「っ・・・!?」




感情が爆発すれば・・・理屈を並べるよりも早く強く本能が勝るのか。


考えるより早く口から音が零れた。


加減の感覚を忘れて発した音は広いフロアに軽く反響しその場の人間の注目を一瞬で引いたと思う。


自分が避けていた他人からの注目。


それでも・・・今はどうでもいい。


むしろ・・・少しでも私の声を聞いてほしい。


私の為ではなく・・・この人の為に。



< 37 / 380 >

この作品をシェア

pagetop