だから何ですか?Ⅱ【Memory】
自分の声なんて自分でも久しぶりに聞いた。
こんな声だったのかと感傷に浸る感覚もなく、再びカウンターに詰め寄ると解放された声をこれでもかと活用し始める。
「ち・・がう。・・あの人・・えと・・理由があって」
「はい?・・・あのぉ、」
「私を助けて・・・その・・本当はもっと早く来てて遅れる筈じゃなくて」
「あの、大丈夫ですか?えっと・・・その、どんな事情あっての遅刻でも特例はみなさない事になっておりまして」
「お願い・・します」
「申し訳ありませんが・・」
「お願い・・します、お願いします、お願い・・だからぁ、・・・っ___」
気がつけば情けなくも子供の様に涙を流しながらの訴えになってしまっていた。
いくら縋っても自分の言葉もままなっていなければ、相手もまったく情なんて見せない徹底したもの。
分かっているのだ。
彼女はルールを守っているだけ。
悪い事などしていないのだ。
それでもせめて話を上に通して考慮くらいはしてもらえないだろうか?と必死に食いついていた自分を、すっと背後から引き戻したのは当人の彼だ。
「・・・失礼しました」
そんな言葉を受付に残すと私の体を今度はしっかりと拘束するように腕を掴んで外に向かう。