幸せの種


琉君はその後、見事医大に合格した。

琉君の学校の特進クラスでも、現役で医大に合格できる生徒は三割しかいない。

その中のひとりになれたということで、琉君にはいくつかの新聞社から取材要請があった。

児童養護施設出身の子が、医学部に現役合格することは奇跡だ、ちしま学園の良い宣伝になると―—。

だけど、そのすべてを園長先生は断っていた。


「琉輝の今後を考えたとき、その記事が残ることは決してプラスになりません。医者になった琉輝のことを、利用してやろうと考える人間が必ず出てきます。普通の家庭から医者になった子のことを、あなた達は記事にしますか? しませんよね? 私は学園の名誉より、琉輝のプライバシーの方が大事です」


園長先生の決意は固く、おかげで琉君は外野を気にすることなく生活することができた。

琉君が行く医大は、全寮制で学費がかからないという。

それでも引っ越しの費用などは自分で何とかしなくてはならない。

密かに困っていた琉君を助けてくれたのが、コウ兄ちゃんだった。


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