幸せの種
――こんな小さな子どもに、投げつけて良い言葉ではない。
この家族は、千花の存在や人格を、全て否定するような接し方をしてきたのだろうか。
誰か一人だけでも、味方になってやれなかったのだろうか。
本来であれば、一番の理解者になるはずの母親が自分を置いて出て行ってしまい、千花は毎日肩身の狭い思いをしながら暮らしてきたのだろう。
ご飯だって、お腹いっぱい食べられなかったに違いない。
いや、与えられていたかどうかすら怪しい。
「たかはしせんせい、ちーちゃん、うまれてこなきゃよかったの? どうやったら、ママのおなかにもどれるの?」
千花は、目の前にあったティッシュカバーの『ミーシャ』を抱きしめたまま、肩をふるわせて泣いている。
「みんな、ちーちゃんがじゃまなんだ。ママだってあかちゃんにとられちゃう。ちーちゃん、もう、どこにいけばいいのかわかんないよ!」
両目からぽろぽろとこぼれ落ちた涙が『ミーシャ』のしっぽを濡らした。
「冷たいよ、ちーちゃん。私のお腹に入ってるティッシュで涙をふいてちょうだい」
――側で控えていた穂香が『ミーシャ』になって千花に語りかけていた。