幸せの種
それを聞いて、千花は素直にティッシュを出して、涙と鼻水を拭いた。
穂香は陽平に、そっと目配せをしていた。
『猫の手』を作って、自分の顔の横にこっそり出している。
どうやら、もう少しの間猫になりきって、千花の本音を出そうとしてくれるらしい。
陽平は静かにうなずいて、穂香に続きを促した。
「ちーちゃんには、家族がいるんだね。いいないいな。私なんて、知らないうちにお店に売りに出されて、穂香先生に買ってもらうまで売れ残ってたんだからね」
「うれのこってたの?」
「そうなの。こんなに可愛いのに、失礼しちゃうでしょ? でもね、今は穂香先生がとっても可愛がってくれてるの。それと、ちーちゃんもね!」
「うんっ! ミーシャ、かわいいよ」
「ありがとう。ちーちゃんも、とってもかわいいよ」
事実、千花は目鼻立ちがはっきりとした、とても可愛い女の子だ。
あと十年もすれば、きっと周りの男子が放っておかないだろうと、陽平は思っていた。