幸せの種
穂香……もとい、ミーシャが上手に会話を続けてくれたお陰で、千花の気もちが安定してきたようだ。
家族の状況、自分が今までどんな暮らしをしてきたのか、そのとき何を感じたのか。
千花は『ミーシャ』に向かって少しずつ語り始めた。
「ちーちゃん、ほいくえんとかようちえんにいかなかったの。だから、がっこうのべんきょうもあんまりよくわかんない」
「まだ小学生になってたったの四ヶ月だもんね。慣れてなくてもしかたがないよ」
「べんきょう、できるようになりたいな」
「そうだね。できるようになったら、勉強はとても楽しいよ」
「たかはしせんせい、べんきょう、おしえてくれる?」
千花が陽平の顔を見ながら、首をかしげた。
陽平はにっこり笑って、こう答える。
「もちろん。夏休みの宿題、持ってきているよね。一緒にやってしまおう。ここにいる間に終わらせて、お母さんやおばあちゃんをびっくりさせるといいよ」
「うんっ! みんな、ほめてくれるかな?」
「もちろん。だから、頑張ろう」
笑顔で『褒めてくれる』と約束してしまったが、おそらく無理だろう。
陽平は目の前の記録用紙にメモをした。
児相にTEL
千花の頑張りを褒めるよう、家族に助言してくださいと伝言、と――