幸せの種

千花の母親が出産したという連絡があったのは、その日の夜のことだった。

母子ともに元気で、順調にいけばあと五日で退院できるという。

就寝準備を済ませた千花が、穂香と一緒にカウンセリング室へやってきた。


「たかはしせんせい! ……あれ、もう、ネコちゃんいなくなっちゃったの?」

「そう。猫もお仕事が終わったから、帰ったよ」

「どこに?」

「穂香先生のお家。あと、少しだけ職員室で仕事するって言ってた猫がいたな」


にやりと笑って穂香の顔を見たら、彼女の頬が少しだけ赤くなっていた。

猫の擬人化がすっかり板に付いた穂香だったが、陽平の前でそれをやるのは恥ずかしかったのかも知れない。


「ところでちーちゃん、いいニュースがあるから伝えるね。お母さん、無事に赤ちゃんを産んだそうだよ。二人とも元気だから、あと五日でちーちゃんも家に帰れるよ」

「……そっか。わかった」


もっと喜ぶだろうと思っていたが、千花はそっけなくうなずいたあと、自信なさげに呟いた。


「ちーちゃん、あかちゃんとなかよくできるかな……」

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