幸せの種
その日から五日間、千花は午前中、陽平や穂香と一緒に学校の宿題に取り組み、午後は学園の子ども達と体育館や遊具でたっぷり遊んだ。
三食きっちり食べ、起床は六時半、就寝は九時という規則正しい生活を送っている。
家ではろくに見てもらえなかったのだろう。千花はスプーンや箸の持ち方を先生方に度々直され、その度に悪戦苦闘していた。
注意されてもめんどくさいなどとは言わず、かっこよく持てるようになりたいと努力を続けている。
こっそりピーマンを残そうとしたところを穂香に見つかって「一口だけ頑張れ」と励まされ、涙目になりながらもぐもぐしている様子を見て、陽平は微笑ましく思った。
「ほのかせんせい、ちーちゃん、がんばったんだよ!」
「うん、えらいね。これでピーマンがちーちゃんの身体の中に入って頑張る力をくれるよ」
「このピーマン、ほのかせんせいもたべた?」
「もちろん。ここにいるみんなが食べたよ」
「じゃあ、みんなにもがんばるちからをくれるんだよね!」
――この子はきっと、幸せになれる。周囲からのアドバイスを素直に聞き入れられる子だから。そして、ほんの少しの愛情も決して忘れない、思いやりの心をもつ子だから。
千花がこのまままっすぐに育ってくれることを、陽平は願った。