幸せの種

千花の母親は、約束の時間より一時間ほど遅れて迎えに来た。

千花は母親とよく似ている。

出産したばかりということもあり、ほぼノーメイクの状態で現れた千花の母親と対面した高橋は、二十年後の千花の姿を思い描いてしまった。

――美人だけど幸薄いって、こういう人のことを言うのだろうな。

千花にはもっと、笑っていて欲しいと心からそう願う。


「ごめんね、千花。寂しかった?」

「うん。さみしかった。でも、せんせいたちとともだちがはげましてくれた」

「そう、良かった。ママがいなくても元気そう」


その言葉にわずかではあるが『棘』を感じたのは、高橋も千花も同じだったらしい。


「ママはあかちゃんでいそがしいから、ちーちゃんがおてつだいするの。だからピーマンもたべて、がんばってげんきになったの」


母親のために元気になるための努力をした、という千花の言葉に、陽平は苦しくなった。

母親からの愛情を信じて疑わない千花と、我が子を重荷だと考えている母親。

児相からの引継ぎ資料には、母親の成育歴にも課題があったと書かれていた。

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