幸せの種

学園に着いたらすぐに着替えて学習室へ向かうのだけれど、今日はまず穂香先生に挨拶しようと思った。

早くしなくては、早番勤務の穂香先生は家に帰ってしまうから。


……帰れる家があっていいな。


羨ましいと思う気もちと、早く帰って先生の子ども達とゆっくりして欲しいと思う気もち、両方がごちゃ混ぜになっている。

写真でしか見たことのない、穂香先生の子ども達。

きっと、保育園でママのお迎えを待っているに違いない。

早くお迎えに行けるよう、わたしは用事をできるだけスムーズに終わらせなきゃいけないと思った。



職員室に穂香先生はいなかった。

わたし達の部屋にもいない。体育館にも、幼児さんの部屋にもいない。

どこに行ったのか探そうとして、気が付いた。

他の先生も今日は少ないということに。


そう言えば、駐車場の車も何台か移動していた。

こういう時、考えられることは、誰かが脱走したということ。

わたし達に刺激を与えないように、こっそり探しに行くこともよくあったから。


玄関の靴箱をさっと見渡すと、まだ帰って来ていない子がわかる。

……やっぱり、ミーナちゃんがいなかった。

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