幸せの種

夕食三十分前になり、学ボラさん達が帰ったあと。

みんないなくなった学習室に、わたしと琉君だけが残った。


「もう、見つかっただろうか」

「わかんない。もしかしたらまだ探してるかも。山本先生の車が戻ってないよ」


学習室の窓からは、駐車場が見える。

【指導部】の山本先生の車……黒い大きな車が、いつもの場所になかった。


「ホントだ。他の先生の車もない」

「早く見つけないと、穂香先生が保育園のお迎えに行けなくなっちゃうよ」

「ああ、それはきっと大丈夫。ちゃんと時間になったら戻してもらえるさ。園長先生は鬼じゃないから」

「だといいけど。それか、高橋先生がお迎えに行ってるのかな」

「それもアリだな。むしろ、穂香先生が先に家に帰って、高橋先生がミーナを探しに行くっていうパターンかも」

「どっちにしろ、あんまり遅くまで見つからないと、みんな大変だよね」

「そうだな。脱走って、かなり迷惑かけるってこと、俺達も前に思い知らされたし」


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