幸せの種

結局、この日の夜遅く、ミーナちゃんは警察に保護されて戻ってきた。

学園から片道二時間近く歩いて繁華街まで行き、知り合いが経営しているお店で電話を借りて友達に連絡したという。

友達と公園に集合したところで、警察から職務質問、そしてミーナちゃんは保護された。

こんな大事なことをなぜわたしが知ったかというと、それは本人が大きな声でアピールしていたから。


そのせいか、今朝の学園の先生方はみんな疲れ切った顔をしている。

穂香先生も、復帰してきた初日にこんな事件があり、大変だったみたい。

それでも朝食のとき、わたしの話をニコニコとうなずきながら聞いてくれて、数学の先生に褒められた話をした時は大げさなくらい、頑張ったことを認めてくれた。


「えらいわ、ちーちゃん! ちーちゃんは本当によく頑張ってるね。ちーちゃんの『幸せの種』は今、どんどん大きくなって、そろそろ蕾が出来ているんじゃないかな」

「つぼみ、ですか?」

「うん。学園にいる間は、まだ蕾かな。高校を卒業して、ここを巣立つ時に素敵な花になるように、頑張っているところだもんね」

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