幸せの種

「頑張っているっていうか……少しでも普通の子に近づけたらいいなって思っているだけです」


そう言った私の目を見て、穂香先生は寂しそうに笑った。


「普通って、難しいよね。勉強はフォローできても、それ以外のいろんなことのフォローが特に。ちーちゃんは自分にできることを一生懸命頑張っていて、本当に偉いと思うの。だけど……」


穂香先生が、言葉に詰まっている。

困っているんだ、きっと。


「先生、いいの。わたしは生きてるだけで十分。だから、できるだけみんなに迷惑をかけないようにするために勉強するの」


そう。何のために勉強するのかわからないけれど、とりあえず今の目標は、みんなに迷惑をかけないために勉強することに決めたから。

わたしの成績が悪かったら、室担の穂香先生が悩むだろう。

教えてくれている学ボラさんだって、がっかりするだろう。

担任の先生も、クラスの平均点が下がったら困るだろう。


だから、わたしはみんなを困らせないために勉強しようと思った。

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