幸せの種
ただいま、と声をかける高橋先生に続いて、玄関に入る。
まだ新築の香りが漂う玄関に出てきたのは、小さな女の子。
水色のリボンを結んだツインテールに、同じ色のワンピース。
穂香先生によく似た、可愛らしい子だった。
「ママー、ちーちゃんとりゅうくんがきたよー」
わたし達が自己紹介するより前に、名前を呼ばれてびっくりした。
奥のほうから、穂香先生からの返事も聞こえる。
ほんの少し間を置いて、小さな女の子が話しかけてきた。
「いらっしゃいませ」
「おじゃまします。……お名前、教えてくれる?」
「たかはし まほです。さんさいです」
「まほちゃんか~。可愛いね! よろしくお願いします」
私の後ろから、琉君も声をかけてきた。
「わー、穂香先生にそっくり! これは高橋先生、嫁に出せないでしょ?」
「嫁……? 絶対にやらん!」
そう言って、素早くまほちゃんを抱っこした高橋先生は、続けてこう言った。
「なーんてね。まほが幸せならパパはそれで満足だよ」
玄関先からこの家は『家族』の愛情がいっぱい詰まっているんだなと、嬉しそうなまほちゃんを見て羨ましく思った。