幸せの種
「いらっしゃい。二人とも荷物を持ってこっちに来てね。お部屋に案内するから」
穂香先生が、まだ一歳の下の子を抱っこして玄関へ来てくれた。
「うわ~、この子も可愛い! ええと、お名前は……」
「たかはし ひなたです。いっさいです。よろしく~」
ひなたくん、という名前の愛想のいい男の子になりきって、穂香先生が教えてくれた。
そういえば穂香先生は、よくこうやってアフレコのようなことをやってくれたっけ。
ティッシュカバーの『ミーシャ』や、うさぎのぬいぐるみ、たまにはピーマンになりきって何とかして私に食べさせようと語りかけてきたこともある。
穂香先生に小さな手を操られ、勝手にアフレコされながらも、ひなたくんはニコニコしている。
「ちーちゃんとあくしゅ」
「ひなたくん、よろしくね」
「りゅうくんとあくしゅ」
「ひなたくん、可愛いなぁ。高橋先生にそっくりなのにこんなに可愛いなんて……」
その言葉に敏感に反応したのが、パパである高橋先生。