幸せの種

エコバッグ二つにびっしりと食材を買い、車のトランクに詰め込んだ。


「先生、ごめんなさい。こんなにお金使わせちゃって」


わたしは知っている。

以前、他の先生が話しているのを聞いてしまった。

学園の先生たちが好意で短期里親をやってくれているとき、お金は全て自腹だということを。

養育里親などは、普通、月に数万円の養育費が出ている。

だけど、そういった手続きをしている訳でもなく、本当に好意で預かってくれる先生には、全くお金が出ない。

だから、さっきも自分の好きな食べ物ではなく、まほちゃんの好きな食べ物を選んだ。


「な~に遠慮してるの! ちーちゃんはまだ中学生なんだから、そんなこと心配しなくてもいいの。穂香先生も高橋先生も、本当の家のように遠慮しないでくつろいで欲しいと思ってるからね」

「わたし、穂香先生が室担で、本当に良かった」

「そう言ってもらえて、私も良かった。だってちーちゃんがいないと、私と高橋先生はきっと結婚していなかったから」

「え? それって?」

「ふふふ。初めて語る穂香先生の恋バナ。まずは車に乗ってから話そうか。早く帰らないとお刺身と子ども達が心配だし」


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