枯れる事を知らない夢
この子はいつもここの授業入るとくっついてくる。3学年で一番美人で有名らしいが…美華ちゃんには負ける。なんて思いながら教室に入ると女子共が囲んでくる。俺は一応みんなに対応するが内心めんどくさい。今頃美華ちゃんは朝霧にベッタリされてんだろうな…。

放課後になり空き教室に向かう。美華ちゃんがいるがわかっているからだ。向かっていると美華ちゃんが前を歩いていた。

「美華ちゃん…」

「…っ」

「この間の事なんだけど…」

「なんですか」

「やっぱり君をほっとけない」

「…っ」

「南斗があれだけ可愛いがってた子ほっとくなんて自分が許せない」

美華ちゃんはすごく困った顔をしながら俺を見ていた。"守るよ"と言うと美華ちゃんは驚いた顔をして大きな目をいっそう大きくしていた。俺は決めたんだ。何があってもこの子だけは守り抜くことを。南斗が俺に託してくれた子なんだから全力で守り抜くのが俺の指名だ。

「教師のくせに生徒に告白すか」

「朝霧…」

「悪いけど美華ちゃんは俺が貰うよ」

「!?」

「!?!?」

朝霧のやつ何言ってんだよ。貰うってどーゆことだよ。美華ちゃんが好きなのか?付き合う気なのか?それとも冗談なのか?転校初日で一体二人の仲に何があったんだよ。もしかして初対面じゃないとかか?それなら朝霧が美華ちゃんに懐いてる理由が納得する。

美華ちゃんは俺らを無視して空き教室に入って行ってしまった。それにしてもなんで朝霧がここを知ってんだよ。不思議に思いながら俺らも空き教室に入る。美華ちゃんがお弁当を食べてる中俺と朝霧は言い合いをしていると美華ちゃんが微かに笑を浮かべた。

「…笑った」

「お前美華ちゃんをなんだと思ってんだよ」

「ん、宝の持ち腐れ」

宝の持ち腐れってお前言葉の使い方間違ってんぞ。ま、確かに美華ちゃんは宝の持ち腐れなのかもしれない。あんなに美しい容姿を持ってて成績を確認すると2年間ずっとトップを保っていた。そんな子がこんな所でずっとお弁当を食べているんだから勿体無いよ。南斗が高校の頃なんて誰よりも輝いてたからな。きっと美華ちゃんだって本当ならそーゆ高校生活を歩んでたはずなのにな…。

美華ちゃんは南斗と写っている写真を優しい顔で愛おしそうに見つめていた。南斗には当たり前にこんな顔をさせることが出来るか…。

「本当に仲良かったよな」

「…」

「だれこのイケメン」

やっぱり朝霧から見ても南斗はイケメソなんだな。南斗異常なくらいモテたもな。でも美人な静香が側にいたから女子は誰も近寄らなかったな…俺にもな。だから俺は高校時代彼女出来る事なく青春を無駄にしてたな。

お昼休みが終わり美華ちゃんが教室に戻るも朝霧は俺の側から離れなかった。

「授業送れんぞ」

「小山っちって美華ちゃんの何なの?」

「何と言うと?」

「あの写真の子美華ちゃんでしょ?それにあのイケメンの事なんで知ってんの?」

「…お前が知る必要はない」

「うわっ…ケチだな小山っち」

「その呼び方やめろクソガキ」

「教師が生徒にクソガキかよ」

「さっさと教室に戻れ」

朝霧は納得出来ない顔をして渋々教室に戻っていった。俺も職員室に戻り遅れて昼飯を食う。あー…毎日コンビニ食は飽きるな。飯作ってくれるような彼女が欲しいもんだよ。

…って考えると美華ちゃんが浮かんでくる俺は相当頭いってんのかもしれないな。美華ちゃんは南斗の大事な妹なんだからこんな感情抱いてはいけないと心にしまい込み明日の授業の準備をする。

授業が長引いてしまい気が付いたら外は暗く先生方もほとんどいなかった。帰ろうと車に乗り込んだ時に珍しい名前が俺の携帯を鳴らす。

「静香どうした?」

「美華ちゃんが!美華ちゃんがまだ帰ってこないの?まだ学校にいたりする?」

「は?」

「いつも帰ってくる時間に家に帰ってこないってお母さんが心配して連絡してきて」

「わかった。探してみる」

「ありがとう」

俺は電話を切り携帯を確認すると19時を指していた。さすがにこんな時間に学校に残ってるはずかないよな?教室に見に行くと美華ちゃんの鞄が机に残っているを見た時に嫌な予感が俺の体を震わせた。あの時のびしょ濡れの美華ちゃんが脳裏に浮かんできて俺は学校中を必死に探し回るも見つからず反対側の校舎に足を踏み入れようとした時に朝霧に鉢合わせた

「なにそんな焦ってんすか」

「お前美華ちゃん見なかったか?」

「知らないすけど俺忘れ物取りに来ただけなんで。なんかあったんすか?」

「…家に帰ってないらしい。鞄も教室に置きっぱなしだったんだよ」

「俺も探す」

そう言い朝霧も一緒になり美華ちゃんを隅々まで探してくれたが見つからず二人で校舎外を探し走っている美華ちゃんが校門の外を歩いていた。

「「美華ちゃん!!」」

朝霧と一緒に美華ちゃんを呼ぶと美華ちゃんはびっくりした顔をして俺らを見ていた。何事なのかと不思議に思っているのか俺らは少し怒り気味で問いかけると美華ちゃんは少し怖がる。
"帰るぞ"と腕を引くと美華ちゃんが激痛に襲われたように声を出すからまさかと思い制服の袖を捲ると酷い痣があった。

嫌な予感があたり制服を捲るとお腹や背中に無数の酷い痣が出来ていた。俺と朝霧はそれを見て怒りに震える。誰だよ。美華ちゃんの綺麗な身体を傷物にした奴らは。絶対に許さねー。
誰にやられたのかを問うも黙ったままの美華ちゃん。やっと口を開いたと思ったら泣きながら

「お兄ちゃんとの写真が…」

昼間見ていた写真がこの身体に傷をつけた奴らに盗まれたらしく泣いていた。自分の身体よりも兄との思い出を心配するなんて…お前ら兄妹揃って馬鹿だな。自分のことを優先しろよ。
とりあえずお母さんが心配してるから美華ちゃんの身体を二人で支えて車に乗せて送る。
家に着くなりお母さんが泣きながら美華ちゃんに抱きついていた。静香も安心した顔をしていた。静香に手当されていた。

「なんで雅くんに助けを求めなかっの!朝霧くんだっていたんだから!美華ちゃんも死んじゃったら私…」

「静香やめとけ」

「でも…っ!」

「死ねたらどれだけ楽なんだろう」

パシンっ…

「「「!?」」」

お母さんが美華ちゃんの頬を叩く。その光景にみんなが唖然とする。あの怒らないお母さんが娘を叩くんだから相当いきすぎたことを美華ちゃんは行ってしまったんだな。さすがの俺でも今の発言は怒りものだな。自分の命をそんな風に言うなんてさすがにいけないよ。

お母さんは泣きながら美華ちゃんに叱る。俺らはそれを見つめる事しかできなかった。こんなに大事に思ってくれるお母さんがいるんだから美華ちゃんは大丈夫な気がしてきた。たぶん後は美華ちゃんの気持ち次第なんだろうけどな…。

その後俺は朝霧を家まで送り届けるため車を走らせる。朝霧は美華ちゃんに深い闇があることを察したんだろう。何も言わずに黙っていた。

「身体なにもないといいな」

「…そうすね」

俺はそれしか朝霧に声をかけてやる言葉が見つからず無言の中朝霧を家に送り届けると車を降りるさえに朝霧が…"美華ちゃん壊れたりしないよな?"と朝霧らしくない顔をしていた。"あいつは強い子だぞ"と言うと朝霧は家に静かに入って行ったのを見送り車を走らす。

美華ちゃんはやっぱり南斗に似てるよ。自分の事を優先しないあたり…そっくりだよ。きっと彼女が全ての真実を知る頃には美華ちゃんは今の自分を悔やむだろうな。でも、よくもまーあんなに似るもんだよな…。南斗の頼み事を聞いた時にはさすがの俺も動揺を隠せなかったけど…美華ちゃんは元々苦しんで生きていく人生が決まっていた面もあったのかもしれないけれども彼女がここまで苦しむ必要なんてないんだよ。

次の日3時間目に美華ちゃんのクラスの授業をしていると朝霧がつまんなそうに机に伏せて寝ていた。近寄り教科書で軽く叩きつけると"いてっ"といい起き上がる光景を周りの奴らが笑っていた。きっと美華ちゃんがいなくてつまんないんだろうな。

"今日なんかめっちゃ教室綺麗じゃね?"

"ゴミがいないからな"

こいつらは相変わらず美華ちゃんの扱いに問題があるな。朝霧はそんな奴を密かに睨んでいた。こんな奴ら相手にするだけ無駄だが俺は美華ちゃんの事に対してそんな事で黙ってるような冷静な大人ではない。

「半地が居ないと教室の空気が重いな?みんな半地が居ないから寂しいのかもな」

「美華ちゃん大丈夫かなぁ…」

と俺と朝霧が言うとクラス中の奴らがどよめいていた。本当につまらん奴らばがりだな。本当に彼女を空気…ゴミ扱いするのならば彼女の話題なんて出す必要がないのにな。馬鹿な奴らだな。どーせみんな周りに流されてるしょうもないクズ共だろうな。

俺は何事もなかったかのように残りの授業を進めた。授業が終わり職員室に戻ると先生方も美華ちゃんの話で持ち切りだった。

"半地がいないと空気が綺麗だ"

"あの子なんでこの学校にへばるんですかね"

大人がクズなら子もクズと言うやつかな。
こいつらも生徒に流されたしょうもない奴らなんだろうな。

「半地さんいないとこんなにも皆さん元気になるんですね。」

「山端先生は彼女をどう思いますか?」

「私も彼女は苦手です。何度も睨まれた事があるんですよ…。」

「しょーもないっすねあなたも」

「え…」

俺はそう吐き捨てて職員室を出て屋上に行き一腹をする。この学校はみんながクズ共過ぎて俺まで貶されてしまう気がする。美華ちゃんは2年間この空間で過ごしてるんだもんな。強い子だよ本当に。

ガチャっ…

「教師が学校でタバコっすか」

「お前…授業中だろ」

「サボりっすよ」

「転校生が早々サボりかよ」

「ここの授業簡単だし…美華ちゃんいないし」

お前のような頭脳の持ち主じゃそりゃそうだろうな。きっと美華ちゃんもそうなんだろうな。
朝霧は地べたに寝そべり寝に入っていた。

「お前なんでわざわざここに来たんだよ」

「…通うの面倒だったから」

「俺に嘘が通用するとでも?」

「はぁ…ですよねー」

「で、なんでだよ」

「両親に対する反抗すよ」

「ガキかよ」

「悪いすか?俺の家庭は…要するにちょっと周りより金持ちの家庭なんすよ。ただそれだけの事で両親の顔に泥を塗るような事をするなって言われて育ってきたんすよ。だから勉強だって専門のカテキョー付けられて毎日勉強してたらそりゃあんなレベル高い高校だって楽勝すよね」

「なるほどな」

「だから…少しくらい反抗してやろって。あの高校やめる事は両親からも学校側からもそりゃ必死に止められたけど俺はそれに逆らった」

こいつもこいつで色々悩み事があんだろうな。俺の高校時代なんて平凡に過ごしてたから特にかける言葉もないから何も言わない。朝霧はきっと違う道を歩んでみたかったんだろうな。親に反抗して縛られない道をな。俺が朝霧の立場なら毎日のように反抗してたけどな。

「んで、そろそろ教えてくださいよ」

「何をだよ」

「小山っちと美華ちゃんの関係」

「…知ってどうする?」

「好きな子の事を知りたいのって当たり前じゃないんすか?」

「…」
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