羊だって、変るんです。
「驚かせてすみません」

申し訳なさそうに声をかけて来たのは、高阪だった。

「い、いえ」

自分よりも15cm程高いその顔を見上げる。

紺の三つ揃いのスーツが良く似合う、細身の男性だった。

少し、神経質そうなシャープな顔に、銀色のフレームの眼鏡をかけている。

『気配が無かった・・・と言うより私がぼんやりしてるのか・・・』

首からかけている社員証を確認した高阪がにこやかに話し出した。

「凱から、貴方が来られる事を聞いております。どうぞこちらに」

杏奈もやっと緊張を解いて何時もの笑顔で挨拶が出来た。

促されるまま高阪の後姿を「姿勢がいいなぁ」と眺めながら付いて行く。
< 104 / 172 >

この作品をシェア

pagetop