羊だって、変るんです。
「!?」

「電話しておいたから、慌てなくてもいいよ」

社会人として、仕事中にしかも重役の部屋で寝るなどと不届き者のする事だと思っていたのに、まさか自分がやってしまうとはと真っ青になった。

慌てなくていいと言われても落ち着くわけでは無く、時間が経てば更に自分のしでかした事の重みに心が冷える。

「あ、の・・ごめん・・なさい」

「杏奈」

諭すような声に、少し落ち着きを取り戻し、凱の顔を見た。

「ごめんね。僕が嬉しくて抱きしめてしまったから」

「ううん。私が・・初めての事ばかりで気持ちも体も一杯一杯になって・・それで」

「うん。友人から恋人のなったら、接し方に戸惑うよね」

少し困ったような顔をして話す凱に、ズキリと胸が痛い。

『こんな顔させたいんじゃない』

何か言いたいのに胸が苦しくて言葉が出ない。
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