羊だって、変るんです。
「待たせたくないって言ってただろ。この距離なら直ぐ慣れる」

凱は何か言おうとするが、どちらに何を言ったら良いのか分からなくなり、呆然と手元を見ていた。

「明日は二人とも休め。どのみち、この状態じゃぁ仕事にならんな」

「誰がしたんですか」

大声を出しそうになるのをグッと堪えると、地を這うように低い声が出たが、慧は楽しそうな笑みを浮かべている。

「杏奈の望みを叶えてやっただけだ。日曜の夜には鍵を渡そう」

「杏奈の望み?・・それって」

気になる言葉に聞き返すが、慧は面白そうにしているだけで、話す気は無いらしい。

「もう行った方がいい。」

チラリと杏奈に視線を移す慧に倣って杏奈を見ると、凱にもたれ掛かったまま目を閉じていた。
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