羊だって、変るんです。
杏奈の後姿を見送った時、怜苑が凱のグラスに並々とワインを注いだ。

「怜苑、凱は酔ってるから」

「大丈夫だって!な、凱?」

蔵人が嗜めるが怜苑は聞こえないふりする。

「じゃぁコレを最後にします」

「いや、もう止めておいた方が・・」

止めるのも聞かずに一気にワインを煽る。

芳醇な香りが鼻に抜けて美味しいと思った所で記憶が途切れた。

グラリと体が左に傾き畳みに倒れこみそうになるのを、慌てて蔵人が止めた。

「怜苑・・分かってて潰すのはダメだよ」

嗜めるように蔵人が言うと、怜苑はペロリと舌を出した。

「なに?凱を潰してどうするつもりだったの?」

「え。何処まで飲めるか知りたいじゃん」

紫苑に聞かれてシレっと答える。
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