羊だって、変るんです。
杏奈が水を持って来ると、横たわって眠っている凱の姿があった。

「凱、寝たの?布団敷いて来るね」

慌しく客間に走っていく。

「じゃぁ僕が凱を連れて行こうかな」

「父さんより、俺の方が力が有るから、俺が連れて行くよ」

紫苑がそう言うと、蔵人は少し驚いたような顔をした。

「僕だって、凱を連れて行くぐらい出来るよ」

「父さんは体鍛えてないだろ。俺は空手で鍛えてるから、お姫様抱っこだって出来る」

酒が入っている所為か、お互いにむきになって来ている。

「僕が連れて行くって言ってるだろ」

「俺が連れて行く」

その様子を面白そうに怜苑と重蔵が見ていた。

お互い譲らない二人は凱の傍で更なる言い合いを始めていた。
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