羊だって、変るんです。
「もう、帰ってしまうんだね」
「うん。明日は仕事だし、向こうでゆっくりするよ」
しょぼくれた顔の父とは対照的に、晴れやかな顔の杏奈を綾子が苦笑しつつ見ている。
「これ、良かったら食べて」
そう言って何時の間に作ったのか、4段重ねのお重を取り出した。
「ありがとう!忙しいのにゴメンネ」
食べ盛りの男たちの食事を作るだけでも重労働なのに、自分たちにまで弁当を作ってくれる綾子に感謝と申し訳なさがこみ上げる。
「滅多に帰ってこないんだから、これ位させてちょうだい。」
「暖かく迎えて貰ってありがとうございます。
また、お邪魔させて下さい」
「お邪魔じゃないよ。寧ろ大歓迎だから、是非また来てくれるかい」
「必ず伺います」
握手を交わして小鳥遊家を後にする。