THE FOOL
少し・・・意外だった。
こんな風にタトゥーをいれる人だと思えなかったから。
それでもすぐに追って気がつく彼の生態。
「これも・・・探求心からのそれですか?」
彫り込まれている腕に触りながらやっとその目を見つめ返せば、目があった瞬間に力ないふわりとした笑みが返される。
瞬時にドキリと反応し、すぐに無意味だと自分を宥める。
「読んでた小説が彫り師の話だったかな。それで興味出て彫りに行ったの」
「へぇ、痛くないんですか?私は恐くて無理ですね」
「ん~、多分痛かった筈。でも・・・本読んでたからうろ覚え?」
その姿を容易に想像でき、雛華さんらしいと小さく噴き出すと。
「ん?何か可笑しい?」
「雛華さんは昔から雛華さんだなぁ。って」
「ん?うん、俺は昔から俺ですよ?」
その表情が私の意図する事を捉えておらず、困惑気味に返された事に再び体を小刻みに揺らして小さく笑ってしまう。
そんな私に牽制なのか、
スッと近づいた彼の顔が至近距離で不動になり、軽い感じに額を合わせた。
「よく分かんないけど・・・」
「・・・はい、」
「芹ちゃんが笑ってくれるの嬉しいからいいや」
ああ、狡い。
普通の人なら躊躇する甘い言葉を躊躇いもなく軽くこなして、その威力を高める様な愛くるしい笑顔で追い打ちをかける。
ねぇ、雛華さん。
分かってます?
他の事情の知らない女の子ならいとも簡単にその姿に落ち込んでしまう魅力を雛華さんは振り撒いているんですよ?
でも、・・・今は目の前の私だけに。
そんな独占欲にも含まれそうな感覚に陥った瞬間に思考を掻き消した。
何を思っているのか。
別に自分と雛華さんはそんな事で一緒にいるわけではないのだ。
私達を繋ぐのは良くも悪くも探求心。
決して淡い感情など不必要な関係なんだ。
それでも、その笑顔の可愛さは否定できず、少しドキドキしながらその頬に指先を伸ばしてしまう。
触れそうになる直前に躊躇ってぴたりと止めれば、その躊躇いを理解した様に私の手に絡んだ雛華さんの指先。
そうして誘導され、躊躇っていた頬への接触。
指先に感じる男の人なのに滑らかな肌の感触にしっかりと吸いついていく。