THE FOOL
「き、気づかないなんてことあるんですか?」
「雛華に至ってはあるんだよ。本人にとっては少しなんか鬱陶しい程度の刺激だったんじゃない?」
くっくっくっと噛み殺したように笑う茜さんが私の肩に腕を回すとグイッと自分に引き寄せる。
その間にキャップを外してあった水が零れそうになるのを何とか防いで、引き寄せた茜さんを見上げれば返される誘惑のグリーン。
綺麗だなぁ。
「・・・・雛華の色とは少し違うでしょ?」
「・・・そうですね」
「どっちが魅力的?」
「へっ?」
問われた質問に驚いて、再度それを確認するように見つめれば、にっこりと微笑んだ彼が「なんでもない」と珍しく引きさがった。
何だろう?
茜さんらしくもない。
そんな考えも次の行動で掻き消される。
あっ、水・・・。
と、確実に床を濡らすであろうそれの心配。
はずみで自分の手からベッドの下に落ちたペットボトルに一瞬の意識の移行。
それでも視線は動かす事を許されず。
見降ろすグリーンが私を捉えて離さない。
「・・・・芹ちゃんは可愛い」
「・・・っ・・な・・・」
「だからいつだって俺は不安なんだよ」
「・・・・不安?」
茜さんともあろう人が?
そんな事を頭で呟き、だけどすぐに与えられる思考を掻き消す甘ったるい唇の感触。
じゃれるように始まったそれは角度を変えるたびに深まって、その深まりを増すのに並行して肌に絡んでくる茜さんの指先。
もう無理。
そう思っていたというのに。
こうして求められれば答えるように反応する私は馬鹿なんだろうか?
それでも、どうしても一瞬、
本当に茜さんの目に不安を感じて抱きしめてあげたくなったんだ。
私の拒絶が無ければするすると進む時間。
すでに一度目のそれを終えての再開、まだ余韻残る体の状態なんて整っていて。
キスを重ねている合間にその態勢に持ちこまれ茜さんの熱を内外全てで感じさせられた。
もしかして・・・・、
ヤキモチだったのか?
そんな事を思ったのは意識がまともに働いた事後の事。