THE FOOL
ああ、デジャブ。
そんな事がよぎる腰の痛みに眉根を寄せて清掃員の制服を纏う。
茜さんに求められるのはもういいとして、せめて翌日の仕事に影響しない程度に収めてもらおうと小さく決意する始末。
それも回数をこなせば慣れるのだろうか?
なんて色めいた考えだと気がつき、熱い顔を手で仰いで邪心を飛ばした。
お仕事お仕事。
そんな事を頭に言い聞かせ、ロッカールームを出ると清掃用具を用意する。
補充用品や洗剤何かをワゴンに乗せ、後ろ向きでそれを倉庫から引っ張りだしている時だった。
そっとお尻を撫でた感触にビクリとし、勢い任せに振り返れば容易に予想できた男の悪戯な笑み。
「おはよ、芹ちゃん」
「従業員へのセクハラで訴えますよ」
「そのセクハラを昨夜は喜んで受けてたじゃない」
「せ、茜さん!!朝からする話題でもないです」
耐えきれないとすでに真っ赤であろう顔を下に向ければ、それを許す筈の無い彼の指先が私の顎の下から持ちあげる。
コレをされたらもう従うしかないのだと抵抗もなくグリーンアイと視線を絡めまっすぐ見つめた。
「・・・今日も可愛いね」
「毎日お世辞は充分です」
「本心ですよ~?」
そう言ってクスクス笑う姿に思わず胸が締め付けられて、その心地よい動悸に浸りそうになった瞬間に思い出した存在。
「・・・・今日は・・・一緒じゃないんですね?」
思わず口走った言葉に主語が無かったのに、そこは理解して軽く笑う姿。
「言ったでしょ?神出鬼没で気紛れだって」
「社内にはいるんですか?」
「ん~、多分ね。何?気になっちゃう?会いたいの?」
笑顔で返された言葉だけれどその響きに若干の嫉妬を感じ、それに些細な疑問でしかなかったのも本当で慌てて首を横に振る。
「い、いやいやいや、そうじゃなくて。ほら、雛華さんってあの格好だし・・・・誤解されて警備でも呼ばれそうで・・・」
昨日まさに私がそれをしてしまいそうで、あの存在を知らなかったのは多分他も一緒だろうと僅かに彼を案じてしまっただけの話。
そう告げれば軽く噴き出した茜さんが片手を上げあり得ないと横に振る。