THE FOOL
さらりと背中の髪が揺れた。
風もない空間での不自然なそれに振り返れば、
絡んだグリーンアイが悪戯に笑う。
宝石の様だと感想を持った次の瞬間、
『ね、君毎日ここにいるよねぇ?』
多分私の髪を悪戯した指先がマナー違反にも人を指さしてくるのに、そんな事を帳消しにする魅力。
それが茜さんとの初めての対面。
ぼんやりとそんな懐かしい記憶が薄れていく。
待って、消えないで。
そんな風に手を伸ばし、ゆっくりと目蓋を開けて光りを取りこむ。
あれ?おかしいな目蓋は開いていた筈なのに。
と、どこかで思い、それでも目の前のグリーンアイの姿を失うのが恐くてその頬に伸ばした手で触れた。
「・・・茜・・・さん」
はっきりしない頭でもその名前だけは絶対に忘れない。
良かった・・・傍にいる。
触れたぬくもりが本物だと安堵して口の端を軽く上げた。
「残念・・・・茜ちゃんじゃないよ?」
耳に入りこんだ声に一瞬の思考の停止。
だけどすぐにフル可動し始めた頭が私がまともに意識ある時の最後の記憶を引っ張り出して冷静になる。
いや、動揺か?
言われて捉えた姿は確かに類似していても自分の求める姿でないと気がつき、頬に触れていた手をスッと引く。
と、同時に、
耳に違和感として響く金属音と手首の不快感。
その異常な光景を自分の手首に捉え頭が混乱する。
「な・・・、コレ・・・」
「ん?玩具だよ。だから心配しなくても簡単に壊せると思うよ~」
青ざめ震える声でそれに釘づけになっている私をよそにその両手首を繋ぐ鎖を遊ぶように指先に絡める男の悪びれぬ姿。
この異常さを、どうってことないでしょ?みたいな雰囲気で見降ろしてくるからどう反応するのが正解なのか分からない。
と、いうか・・・見降ろす。
そうその視点に気がつき自分の状態の再確認。
玩具であろうと両手を手錠で拘束されている私は感触豊かな何やらベッドの上らしき所に倒されていて。
それに跨る様に私を見降ろすのは婚約者によく似たその叔父である男。