目を閉じたら、別れてください。

「ごめ。まあ二次会もお願いねってことで」

『ねえ、あんた、無理してない? 風邪なんて引いたら何もしなくてひたすら寝てるような怠け者だったでしょ?』

沙也加の声に、私は窓を開けて外を見上げる。
まだ少し風は寒く、夏には遠い。
急がなくていい。まだ全然急がなくていい。
式なんて一年近くも先のこと。
急がなくていいのに、私は咳を止められないように加速していた。

「だって。追い詰めなきゃ、逃げ出しちゃいそうなんだよね」
『は?』
「マリッジブルー」

あははと笑ったらそのまま咽て咳が止まらなかった。

「わかんない。わかんないんだけど、嘘の代償を嘘で払って、そんで一生嘘をつくかんじ。ふふふ」
『……桃花?』

「……ごめん、ちょっと咳、きついわ。寝る。彼の方の幹事と連絡交換してもいい?」

『いいけどさあ。あんた、まずは風邪を治してから冷静になりなよ』


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