目を閉じたら、別れてください。
「ありがと」
私だって何をしているのか、自分でもわからなくなるよ。
でも止まりたくないし、止まらないし、嘘はあふれちゃうし。
たった二文字が、私を動かしている。
ただそれだけなんだ。
次の日はマスクをしていった。
泰城ちゃんが百日咳だの喘息だの検索しては教えてくれている。
「ねえ、ちょっと私、鼻が高くなってない?」
「なんでですか? え、うそ、もしかしてエステって、鼻まで高くしてくれるんですか!?」
「いや、ピノキオみたいにってね」
マスクの上から鼻を押さえたがどうやらまだ無事らしい。
「エステ、はじめたら効果教えてくださいね。それより、先輩、カラードレス決めました?」
「決めてない。私って明るい色じゃないと顔色悪く見えるらしくって。青とか紫がよかったんだけどさ」
と言いつつ、いまだにドタキャンしてるんだけど、それは伏せておいた。
「ええー。決めたら教えてくださいよ! 先輩のドレスにかぶらないカラーで参加するんで」
「気合入ってるね」
「もーう。神山商事の幹部勢ぞろいなら気合入らない方がおかしいです」