目を閉じたら、別れてください。
「……昔ですよ。昔」
「でもあのモデルが、君がお見合いすることになった理由でしょ」
斎藤さんは何か察したのか、それ以上はもう言わず去っていく。
彼は俺に何を言いに来たのか。
一度駄目になっている俺たちに先回りしておせっかいなのか、もう崩れてみえているのか。
「……」
去っていく足音に、冷静になっていく。
元カノは確かに桃花と付き合っているよりは楽だった。
モノで機嫌を釣れる。ブランドバックやらコスメ、高級レストランで食事でもしとけば満足。
あいつが喜ぶことなんて簡単で、いつも磨かれたネイルや手入れされた髪さえほめておけばいい。
あいつが、モデルになったから30歳までは恋愛禁止と事務所に言われたというのと、下着メーカーの専属モデルになったのを機に別れた。
結婚って言うのは、楽な相手だからするってわけには俺にはいかなかった。
下着の広告や雑誌、CMであいつをみたうちの両親が、よく思っていないのも分かった。
モデルの仕事が楽しそうだったのも分かった。
なにより俺が、恋愛禁止だと下品だの騒ぐ親に、真剣に立ち向かうつもりがないのが分かった。
面倒だと、億劫だと、まじめに付き合う熱意が俺にはなかった。