目を閉じたら、別れてください。


『君、彼女と別れたらしいね。社長が心配してたよ』
それは、斎藤さんからの一本の電話から始まった。

「あー、なんか面倒で。俺に恋愛結婚は向いてねえっす」
『同じく、恋愛結婚に夢を見ていない姪っ子がいるんだけど』
「まじっすか」

斎藤さんの姪ってだけで会社のためになるのがすぐにわかった。
斎藤さんをうちの会社と良好な関係に保つのに損はない。

そして俺は彼の姪を知っていた。

奇麗な顔、媚びない意志の強い目。洒落っ気のないTシャツとジーンズで、ひたすら酒を飲むだけ飲んで大人の彼氏に迎えに来てもらって飲み会からさっさと消えた。
男に媚びない様子は、大人の彼氏がいるからなのか。
確かに綺麗だがあれは愛されている詩人のおかげなのか

あの大人の彼が、斎藤さんだったのだと後からわかった。

「まあ、斎藤さんの姪なら会ってみてもいいかな」

ただそれだけの出会いだった。


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