目を閉じたら、別れてください。
『進歩さん、立ち食い焼肉行きませんか!』
『進歩さん、次の日曜は時間ありますか』

積極的に私の方が彼を連れまわしていた。
お見合いの席で、知的で物静かで寡黙な彼を見た瞬間から絶対に離すものかと常に連絡して彼を振り回していたと思う。

時々、彼は文句を言わずに付き合ってくれるけど本心はどうなんだろうと不安になった。

けれど聞くと、『桃花が楽しいところが、俺も楽しいところなので』と控えめだった。

『今度は、進歩さんの行きたいところに行きませんか?』
『俺の行きたいところ……かあ。一本道なんですが工事中でちょっと危ないんですよね』
『山の上とかですか?』

彼は静かに微笑んで、秘密ですよと教えてくれた。
丘の上の、今度高層マンションが建つ予定の場所。
そこからこの町を見ると、100億ドルの夜景という言葉がぴったりだという。

『昔、そこに祖父の家があったんです。そこから花火大会を見たり、夜景を見るのが好きでして』
『行ってみたいです!』
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