目を閉じたら、別れてください。

誰にも塞げようのない、彼が一ミリも悪くない事故だった。
私が我儘を言って遅くまで連れまわしたのが原因でもある。
だから私は、彼への態度は変えなかった。私が悪かったから気にしないでと、何度も言った。

けれど、エッチ中の傷への愛撫が増えた。
キスをしたり、指で撫でたり、舌を這わせたり。

淡白な彼が傷にだけ異様に愛撫するのも違和感があったし、私は容姿も体系も平凡で魅力的な部分はないので、極力はやく行為を終わらせたかった。
なので、傷を触る分、身体を見られているって思うとどうしても苦痛だった。

自分に自信がなかったのが一番の原因だったのかもしれない。

『黙っていたけど、私のお腹の傷――なの』

嘘を告げて逃げたあの夜。
転げ落ちた指輪のように音もなく私は終わりたかった。消えて、何もなかったように振舞いたかっただけ。

二度と会わなくてもいいと思っていたのに、どうして彼が私の元へやってくるのか不思議でしょうがなかった。
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