目を閉じたら、別れてください。
「さっき別れたばっかなのにまた会ったな」
機嫌よく階段を上がってきた進歩さんは、横目で酔っ払い二人を見つつカウンターの方へやってくる。
「そうですね。また会ってしまいましたねー」
「運命ってやつかな」
隣に座りつつメニュー表を見る。
機嫌がよすぎて怪しい。隣の沙也加が、進歩さんに顔立ちやらさわやかオーラに騙されて、私に肘でツンツンしてくるのも困った。
「今日、桃花のドレスの試着どうだったんですか?」
「可愛かったよ。ああ、見る?」
「ぎゃー!」
携帯をズボンのポケットから取り出そうとしたので、すぐに奪おうとしたら上に持ち上げられてかわされた。
「大丈夫です。もしかしたら、カラードレスの色あてクイズとかあるかもだから楽しみにしてます」
「もー。それより、二次会のメニューは私たちで決めるから、あそこのソファで酔っぱらってる二人をなんとかしてくれない?」
笹山たちを指さすと、座っていた椅子を回転させてソファ席の方を向いた。
「あーあ。笹山って酒ほんと弱いのに。誰が飲ませたんだ」
「勝手に飲みだしたんですー。試食とか言って」
「笹山はあれだが、井上、お前までさあ」
ため息吐きつつ、まずは井上さんからトイレに連れて行ってあげていた。
「優しそうな彼だねえ」