目を閉じたら、別れてください。
「……桃花」
「早く笹山をなんとかしておいて」
「桃花、待て。言い訳になるが――」
その言葉を遮りたくて、私は首を振る。
「大丈夫。もう破棄しないから。ちょっとのことで逃げないし」
笹山や、沙也加たちが決めてくれたBARを見渡しながら、こぼれだす本音は嘘を隠してくれる。
「招待状も出した。料理も決めた。もう今更ここまでしといて破棄するほど私は子供じゃないよ」
「その言い方だと、ここまで決まったから辞めれねえって言ってるように聞こえるが」
「進歩さんだって今更ここで辞めたら困るでしょ。私より、――困るのはあなただよ」
此処まで決めたら、逃げられないのは進歩さんも同じだ。
一度破棄されて噂されているはずだしね。
見上げた進歩さんは、今にもとびかかってきそうな強い感情を必死で抑えているような様子。
その様子に私も首をかしげる。
その強い感情は、何だろうと目を覗き込む。
「桃花―。誰も戻ってこないからメニューチェック付き合ってよ」
「はーい。頼むからね、この笹山」
駆けていく。私を追わず笹山に話しかける声を背に、私ももうとっくに限界だった。