目を閉じたら、別れてください。
「いいですよ。あ、でもここら辺って田舎寄りですから億マンションとかないですけど大丈夫ですか?」
「君、俺を何だと思ってるんだ。ふつうの神山不動産の一社員ですよ。高給なマンションは今は欲しくない。結婚したら考えるけど」
「ですよね! 私、結婚するならこのマンションがいいです。二階にジム、一階に住人限定のカフェ、クリーニング屋、一階の管理人さんは宅配も手配してくれるし!」

何も話をしてるんだ。
私が机の下にいるのを忘れてないか。

けど、さっきロッカールームでの私の態度と全然違う、優しい声の進歩さんに戸惑う。

こっちの方が本性で、私が嫌いだからさっきのは敵意ではないのだろうか。

優しい声色の方が彼らしい。

「そうやって自分の意見を発言してくれる女性って魅力的だよね」
「そうですか? 私は自分が住むなら妥協したくないだけですけど」
「俺に合わせようとする人より、振り回してくれる人の方が刺激的で楽しくないですか?」

「……」

小さくコツンと音がする。泰城ちゃんには気づかないような小さな音。
革靴でデスクを向こう側から叩いた音だ。ちょうど私の背中に響くぐらいだから真後ろだろう。

気のせいじゃない。彼は私がここに隠れてるのを知っていて会話してる。
< 19 / 208 >

この作品をシェア

pagetop