目を閉じたら、別れてください。
「ここ近辺の載った情報誌持ってきますし、紅茶と珈琲どちらがいいですか?」
「いいよ。客じゃないし」
「では冷えたお茶ならすぐに持ってこれますので」
「悪いね」
給湯室へ行ってしまう泰城ちゃんの足を眺めながら、先ほどからこつこつと微かに響く振動に、背中に変な汗が流れていく。
「――頭の回転が速そうな後輩だな。お前、自分の嘘しゃべってんの?」
「……」
「てか、デスクの下って間抜けじゃねえの。さっさと出て来いよ。他の社員に頭が可哀想なやつだと思われるぞ」
ちょっと強く叩かれて、これはDVだ! 職権乱用だと一人胸の中で叫ぶ。
でもどうしても出て行く気にはなれなかった。
「面白いよな。あんなに俺を振り回していたくせに意外と、振り回されそうになったら逃げるなんて。ダサいというか弱いというか」
ククっと笑った彼が椅子に座ってくるくる回っているような音がする。
それでも私は、終わってしまった恋にざわざわすることぐらいしかできない。