目を閉じたら、別れてください。
「は?」
「でもそれって帰ってきたらどうなるのかなとか、思うじゃん」
海外赴任についていくのが怖くて婚約破棄?
それは私は知らなかった。私からは勿体ない相手だからと親が怒るのを無視してそれ一点張りで押し通したし、彼には結婚できない体になったからと言ったのに。
「本人によくもまあ聞けるよね」
「都築さんがそんな色っぽくなくなったのって、婚約破棄してからじゃないかなあって」
「余計なお世話よ。元々、恋愛結婚は面倒だなって思ってただけ」
それ以上は聞きたくなくて、不機嫌オーラを出す。
「あのさ。言いたくないことを聞くって、笹山ってデリカシーないしモテなさそうだね」
「うわ、ダメージきた。ダメージ200だ」
「私、こんな奴だから愛想つかされたの。これ以上聞くなら本当に帰るから」
泰城ちゃんなら素直に話せたけど、笹山は口が軽そうだし信用ならない。
ただそれだけで不機嫌になってしまう自分も自分だけど、億劫なのは隠せなかった。
こう考えると、やはり進歩さんは理想的な人だった。偽りだったにしろ、あんなに一緒に居て楽な人もいなかった。
本社までの長い30分。
彼と笹山を比べたくなくて、BGMの音量を上げた。