目を閉じたら、別れてください。
思わず、二歩後ずさる。
笹山と叔父さんの背中に隠れ、逃げ場のない壁に背中を押し付ける。
動揺してはいけない。動揺してはいけない。
けれど磨かれた革靴しか見れない。
「は。お前、まじで専務に怯えて、都築さん連れてきてるの」
「うっせ。言うな、こら」
「俺の話題ってなんすか。俺がトリリンガルだって話題?」
「元気がいいならお前に会議出てもらおうかな」
三人が会話する中、必死で足の数を数えた。六本ある。増えない。あ、私の足を数えたら八本ある。増えた増えた。
男三人と乗ってるせいか、空気が薄いし息が詰まる。
一年も会っていなかったのに、昨日のように思い出されるから胸が痛いんだ。
彼がバイリンガルどころかトリリンガルなんて知らなかった。英語と日本語、他に何をしゃべるの。
知りたくないのに話題が頭の中には居てくるのが嫌だ。
「――都築さん」
「え、はい」
笹山がエレベータの開閉ボタンを押さえていた。
「降りてください」
「ありがとう」