目を閉じたら、別れてください。

叔父さんと進歩さんの背中を見ながら、降りる。
笹山はまだ緊張しているのか私の様子を見ていないのは助かった。

社員証を見せながら部署に入っていくが、どうやらここが新しい部署らしい。
新品の皮の匂いがした。中はまだデスクが並ぶだけの簡素な様子。皮の匂いは、一番奥のデスクの椅子だった。

笹山が欲しかった資料は、新事業部の方で扱うことになる土地関係の資料だ。
うちは賃貸専門だったのに、新事業部署は土地等の買い取りと販売、戸建ての販売も始めるのだと思う。
興味がないから叔父さんとは話していなかったけど、多分叔父さんがサポートにつくんだ。親の七光りで新部署の部長になるこの人の後ろ盾に、叔父さんが抜擢されたに違いない。


「そういやこの間の社内研修でさ」
「あー、いたな、確かに」

仕事中に雑談してんじゃねえよ、さっさと資料確認っしろってんだ。

「早く終わらせろよ、このテクなしどもが――って考えてる?」

叔父さんが私を横目で見ながらクスクス笑っている。
が、正解といえば正解だ。
< 38 / 208 >

この作品をシェア

pagetop