目を閉じたら、別れてください。
「叔父さんが怖いからってシュークリームとロールケーキでのこのこ着いてきた私も悪いけどね」
「ふうん。どうして俺はそんな怖がられるかなー」
ふてぶてしく叔父さんは言いのけるが、くせっ毛の髪をオールバックにしてる辺りが駄目なんだ。セットするのが面倒くさいからって言ってるが、このセットの方が面倒だと思う。
「というか、お前、俺の実家に漫画置きっぱなしだろ」
「そうだっけ」
「あれの最新巻出てたから、早く買ってこいよ」
「……木曜に持っていく」
お寿司か焼肉を、単行本一冊で済むなら安いものだ。
おじさんが独身なのは、私の面倒を見ている時に一緒に少女コミックにハマったのも原因がありそう。恋愛にロマンチックを夢見ている臭い。
「一年ぶりの、神山くんはどうだい?」
「別に。人が違ったかと思ったけど」
「ときめいたりはしない、と。桃花は本当にひどい子だ。少女漫画の主人公向きではないね」
「や、罪悪感はあるけど、別に主人公になりたいわけではないよ」
笹山と同い年にしては、やはり落ち着いているし御曹司だけあって知的だし、しゃべり方も柔らかくて、叔父さんと違って話しかけやすそう。
「彼からは君の名前を出すのは、いつも辛そうだった」
「え」
「偶に海外から帰ったら、電話してきて。俺に会いたいわけじゃなさそうだったから、君のことを知りたかったんだろうと思う。だが、上手く聞き出せなくて、酔ってから一言。彼はいつもなんて言っていたと思う?」