難病が教えてくれたこと
…まあ、でも、打てただけ進歩か…?
裕くんは隣で苦笑してるし。
秀一は秀一でお腹抱えて笑ってるし…
「…クククッ…」
お腹抱えて爆笑してる秀一。
李那の顔を見るとニコニコしてる。
…あれは怒ってる顔だ…
ーバコッ
「ってぇ!」
…ん?
今、何が起こったの?
え、今打ったの、李那だよね?
「え、李那?」
「ん?」
「李那、テニスのコツ掴めてなかったんじゃ…」
李那は私の肩をぽんと叩くと笑顔でポンポン叩き続ける。
「私を舐めてもらっちゃ困るな〜
コツさえ掴んでしまえば余裕。
2回目で余裕でコツ掴んだし、柊ムカついたから丁度いい。」
…怖い。
李那…
天使の顔した小悪魔だ…
「秀一、大丈夫?」
「…あいつ化物かよ…」
たしかに李那はなんでも出来ちゃうよね…
勉強以外。
李那自身も勉強は得意じゃないって言ってたし…
「あースッキリしたっ、てことでワンゲームしよ?」
李那はニコニコこちらに向かってくる。
ラケットで秀一を叩く。
「陸上で柊私に勝ったことないよね?」
…鬼だ。
こわっ…
「それとも、不戦勝で私と裕くんが勝ちってことでいいのかな?」
「…その勝負、買ってやらあ!」
…秀一、こんな熱血キャラだっけ?
「負けた時の言い訳を考えておくんだな!」
…秀一もロクにテニス出来ないくせに…
私とやってる時でもラリー続いた時ないよね?
「李那、やめとけ。」
「秀一、やめとこ。」
私と裕くんの声が被った。
「「なんで?!」」
「「うられた喧嘩すぐ買うのやめなさい。」」
…似たもの同士じゃないか…

ー次の日。
私は李那と学校に向かった。
「あれ、あれって井上世莉香じゃね?」
「ほんとだ。」
李那が心底嫌そうな顔をする。
「携帯持ってソワソワしてる。」
…?
あそこにいるの、蒼空じゃ…?
何してるんだろう、あんなにビクビクして…
「ね、李那…」
「何?」
極力気づかれないように私と李那は蒼空の所に行く。
「蒼空、あんた何してるの?」
「うおっ…良かった、李那…海澪…」
私と李那は蒼空を連れて裏門から入る。
ここ、使っちゃダメなんだけど、使ってる。
使ってると言うより、乗り越えてる…?
「ここからなら気づかれないっしょ。」
「確かに。」
蒼空はほっとした顔で私と李那の後ろをついてくる。
「で?何があったの?」
「実はさ…」
蒼空は小声で私と李那に全てを教えてくれた。
井上からLINEが来て、蒼空は返す必要がなくてそのまま放置してたこと。
そしたら昨日、蒼空と出くわして追いかけ回されたこと。
結局捕まってなんで返信くれないのかと問い詰められたこと。
怖くなって学校に入れないこと。
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