きらきら
わたしと草賀は職員室まで部室の鍵を返しに行くと、カメラを片手に連れだって校門を出た。



まさか男子と一緒に公園を歩く日が来ようとは、夢にも思わなかった。


さすがに真横に並ぶ自信はなかったので、わたしは数歩遅れて彼の後ろを歩いていた。


あの日偶然写り込んだ彼の背中は、ファインダーで覗いたときよりも大きく見えた。


あまりファッションに興味がないのか、すっきりとした彼の短髪はさわやかさすら感じられる。ほかに比べて少し長いえりあしが、白黒のカーディガンの襟に軽く乗っているのも、鬱陶しいどころか精悍さを感じさせるほどだ。


知らぬ間にわたしは首からぶら下げたカメラに手を伸ばしていた。彼に気付かれないように立ち止まると、後ろからカメラを構えた。昨日と同じ、彼の背中がファインダーに収まった。


だが違う、何かが足りない。


わたしはそこでうーんと唸った。昨日の写真に近づくには、まだまだ感動が足りない。あの全身を震わせるような高揚感がない。


数歩歩いたところで、わたしがついてきていないことに気が付いたのか、草賀がこちらへと振り返った、その姿をファインダー越しに見ていたわたしは、その瞬間に、これだ、と思い極まってシャッターを押した。


撮られたほうの草賀は呆気にとられて、ただぼうっとこちらを見ている。


少し間があって、自分がされたことに気が付いたのか、「な、なに?」と訊いてきた。


「なんでもないよ」


そう答えたわたしの顔はきっと、いつも以上に笑顔だったに違いない。


小川まで降りて来て、彼にカメラを渡すとすぐに彼はファインダーを覗きこんで、あちらこちらにレンズを向ける。どうやら一通りのカメラの知識はあるようだった。


わたしはそんな彼の姿を、少し坂になった小川の傍に腰を降ろして、じっと見つめた。


しばらくして納得できるアングルを見つけられたのか、彼は小川に向ってカメラを構え、楓を撮ったときのように、構えてからは一歩も動かないどころか身体もほとんど動かさない。


今度は何を待っているのだろう。


そこから数分、彼はカメラを構えたままじっと待っていた。やがて、カシャっとシャッターを切ると、わたしのほうへと戻ってきた。


「一枚でいいの?」


「あまり数多く撮るのは好きじゃないんだ。それに湯川さんのフィルムだから無駄にできないしね」


そう言ってにっこり微笑む彼の表情は、わたしの心に焼き付く。
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