なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 帰りたいはずがない。


朱熹の気持ちを考えると、無理やりキスをされて嫌な気持ちになっただろうと思った。


当然、戸惑っているであろうと思う。


 だからこそ、帰った方がいいかと聞いた。


 でも、朱熹は、拒んだり嫌な顔を浮かべることはできないのだ。


 自分が、皇帝であるから。


 もし自分が皇帝でなければ、頬を引っ叩かれていたところだろう。


 自分がただの男の曙光であるなら、もっと強引に朱熹を口説くことができた。


 でも、彼女には拒否権がないのである。


 自分が好きだと言って、朱熹を求めたら、彼女の本意はどうであれ、それに応じなければいけない。


 だからこそ、自分は慎重になるべきだったのに……。


 反省して落ち込んでいる様子の曙光を見て、朱熹は胸がチクリと痛んだ。
< 131 / 303 >

この作品をシェア

pagetop