なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「素敵な簪をいただいたのに、お返ししてしまって申し訳ありませんでした」


「いや、女性に物を贈るというのは初めてで、適切な物が分からなかった。受け取る側の気持ちも考えずに……すまなかった」


 初めての贈り物だったとは知らず、朱熹は顔が真っ青になった。


 なんてことをしてしまったのだろうと返したことを後悔するが、高価すぎる物をいただくわけにはいかないとすぐに思い直した。


「お気持ちは十分いただきました。簪もお花も、どちらもとても嬉しい贈り物でした」


 朱熹はにこりと笑って、お礼を述べる。


 その笑顔を見て、曙光は安心した。


 秦明と違って女慣れしていない曙光は女性が何を喜ぶのかが分からない。


 思い悩んで贈った簪だが、間違えた物を贈ってしまったと気に病んでいた。
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