なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 しかし、朱熹の笑顔を見て、失敗というわけではなかったのだと安堵した。


「曙光様……」


 突然、名前を呼ばれて曙光は驚いた。


 ただ名前を呼ばれたことに驚いたわけではない。


いつもは陛下と言っていて、あれほど名前で呼ぶことをためらっていたのに、とても自然に呼ばれたからだ。


 でも、曙光が本来望む呼び捨てではなく、様がついている。


 喜ぶべきか、まだ壁があると悲しむべきなのか、曙光の心は複雑に揺れる。


「お命を狙われているというのは本当ですか?」


 朱熹は唐突に本題に入った。


 探りを入れるように遠回しに聞くべきか悩んだが、ここは素直に直接聞くべきだと判断した。


 大事なことは、遠回しに聞くべきではない。
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