なりゆき皇妃の異世界後宮物語
いつも熟考する自分が、あの時まるで強烈な感情に突き動かされるかのように勅命を言い渡した。


 ……君が、欲しかったからだ。


 そんなことは、もちろん言えない。


「あの時とは状況が違う。あの時は、朱熹や一族の気持ちを深く推察することができていなかった」


 朱熹や一族の気持ちをまったく考えずに婚姻を結んだのではない。


 皇后という位は、一番高い地位なので、喜んでくれると思っていた。


 けれど朱熹は、地位や権力などには興味のない女性だった。


 結果、朱熹の気持ちを無視して無理やり結婚した形となってしまった。


 そして、心の声が聴こえる一族がいたというのは、曙光の生まれる前の話であり、伝説や架空の昔話のように曖昧で現実味のない人達だった。
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