亘さんは世渡り上手



「……亘さん、俺、また向こう行かなきゃいけないんだけど」



ゴールした後、そう嫌みを言えば、亘さんは縮こまって下を向く。



「ごめんなさい……。でも、このお題だけは和泉くんがよかったので……」


「なに?」


「……えっ」


「え? だから、お題、なんだったの?」


「………な、内緒です」



目を逸らして言う亘さんに、若干気分が悪くなった。そんなに言いづらいお題なの?



「ふーん? まぁ、後でじっくり聞かせてもらうけどね」


「……い、言いませんよ?」



俺はそんな亘さんの反論を無視して元の場所へ歩き出す。横目で見れば、亘さんは谷口に睨まれながらも一位の旗へ並んでいた。


……やっぱり、亘さんが勝っちゃったか。


不思議と不快じゃない。さっきまであんなに悩んでいたのに、俺の答えはすんなりと決まっていた。


これが谷口だろうが亘さんだろうが、俺にとっては一緒だ。


亘さんに引かれた腕がじんわりと熱くなる。俺はそれを隠すように、大げさに腕を振って走った。

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