青夏ダイヤモンド


「私もいいと思う。絵は、苦手だけど、花とか作るし、色塗りとかならいけるかも」

去年の文化祭は何をやったかも思い出せないくらい自分は当事者意識が皆無だった。

多分、準備期間も当日も苦痛でしかなかったに違いない。

沖田くんのいう通り、来年は今よりも受験色が濃くなるだろうから、私が学生生活の良い思い出を残すためのチャンスは今年だけかもしれない。

沖田くんを助けたい、と思ったのは確かだけど、手を挙げたのは自分自身のためでもあった。

ちらほらと色塗りなら、とか、肺活量いける、とか、プラスの言葉も小さいながらに聞こえるようになってきた。

「学生の本分って勉強だろ?こういうイベントに労力使うのって無駄じゃない?」

クラスメイトの1人が凛とした声で意見を言った途端、教室内が静まり返る。

そう思っていた生徒達が何人かその意見に賛同する。

ああ、良い方向に傾きかけていると思ったのに。

何よりも受験を重要視する派閥があるのはわかっていて、そういう意見が挙がるのも当然と言えた。

「塾ある奴もいるだろうし、予定がある時は申告制にして、やれる奴だけでそいつの分はフォローすればいいんじゃね。それで、恨むのは無し。どうせ何もやらない選択はできないんだから、お互いを尊重してやるのがいいんじゃねぇの」

誰が言ったのか一瞬わからないくらい、独り言のように呟かれた。

ずっとそうしていたように、頬杖をつきながら脩が発言した。



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