青夏ダイヤモンド
文庫本を2冊手にしながら祖父の書斎をノックすると、短い返事があった。
「最近読むペースが早くなったな。特進クラスなら勉強も大変なんじゃないか?」
「大変だけど、息抜きも必要だから」
書斎といっても4畳ほどしかない部屋だが、祖父はこの部屋で本を読みながら1日のほとんどを過ごす。
本棚には歴史小説がほとんどで、私の歴史小説好きもここから来ている。
母は私が中学に上がる前に父と離婚すると、祖母を亡くした祖父と暮らすようになり、仕事をしている母がいない日中は祖父と2人きりだ。
借りていた文庫本を返しながら次の本を選び始める。
「何かあったか?」
「え?何で?」
「本を読み進めたくなる理由の一つは、本から何か教わりたい時だ。都は急いで次の本を読もうとしているように見えてな。何がそんなに知りたい?」
「いつも教わりたいと思ってるよ。この主人公ってみんな今よりも酷い状況に置かれているのに前に突き進もうとするよね。どんな困難も乗り越えられるって信じてる」
一冊本を手に取っては、あらすじを読んでパラパラとページをめくっては元に戻す。